外注費は「送った数」で払い、「納品数」で割る
製造原価計算で、自分の数字でそのまま計算できます(登録は要りません)。
外注費は、見積もりの中でいちばん迷わない項目に見えます。熱処理にしても表面処理にしても、外注先から見積もりが来ているなら、その金額を入れるだけだからです。自分で時間を測る必要も、チャージを決める必要もありません。
ただ、その金額を1個あたりの原価に直すところで、静かにずれます。
外注費が何なのか、見積もりのどこに入るのかは 金属加工の見積もりの出し方 にまとめてあります。ここでは、その先の1個あたりに直す部分だけを扱います。
払う数と、割る数は違う
例として、納品100個の部品を考えます。不良の見込みを3個とすると、作るのは103個です。熱処理より前の工程で落ちなければ、この103個を熱処理に出します。単価は180円/個とします。
外注先への支払い = 180円 × 103個 = 18,540円
⚠ 103個ぶん請求されます。 外注先から見れば、処理したのは103個だからです。100個ぶんにはなりません。
一方で、お客さんに請求できるのは100個ぶんです。3個は納品されません。
納品1個あたりの外注費 = 18,540円 ÷ 100個 = 185.4円
外注先の見積もり単価をそのまま原価表に写すと、この差が落ちます。 1個あたり5.4円、ロット全体で540円です。金額としては小さく見えますが、不良の見込みを大きく取る部品ほど広がります。
これは外注費に限った話ではなく、材料費も工具費も同じ形をしています。⭕ 製造原価計算ツールは、不良の見込みを入れるとこの割り戻しを自動でやります。 外注の欄に入れるのは、外注先の見積もり単価そのままで構いません。
定額か、1個単価か
外注の請求のされ方は、大きく2つに分かれます。この2つは、不良が出たときの動き方が逆になります。
| 例 | 不良が増えると | |
|---|---|---|
| 1個単価 | 熱処理180円/個、めっき120円/個 | ⚠ 総額が増える(送った数ぶん請求される) |
| 定額 | 1ロットいくらの最低料金、炉1回いくら | ⭕ 総額は変わらない(同じ炉に入れば同じ) |
同じ「外注費」でも、性質が違います。 1個単価は材料費に近く、定額は段取り費に近い動きをします。
1個単価 投入数が増えれば、そのぶん増える
定額 投入数が変わっても動かない。⚠ ロットが小さいほど1個あたりが重い
定額のほうは、ロットが小さいときに効いてきます。 熱処理の最低料金が15,000円だとすると、100個なら150円/個ですが、10個なら1,500円/個です。部品の加工費より外注費のほうが高い、ということが起きます。
→ 小ロットで単価が上がる仕組みは 小ロットだと単価が上がる理由 にまとめています。
⚠ 「1個単価だと思っていたら最低料金があった」は、見積もりの後で分かることがあります。 単価だけでなく、最低料金の有無を先に聞いておくと、後から差し替えずに済みます。
製造原価計算の外注欄では、かかり方を「1個ごと」か「ロットに1回」から選べます。1個ごとなら送った数(納品数+不良の見込み)で掛かり、ロットに1回なら数量が変わっても動きません。上の最低料金のような費用は、ロットに1回で入れます。
送料を、どこに入れるか
⚠ 先に、2種類の運賃を分けます。 見積もりの中で運賃という言葉は2回出てきますが、別のものです。
| どの便か | 入る場所 | |
|---|---|---|
| 納品運賃 | 自社 → お客さん | ⚠ 原価の外(提示額に乗せる) |
| 外注への便 | ⭕ 自社 → 外注先 → 自社 | ⭕ 原価の中(この記事で扱うのはこちら) |
納品運賃のほうは 提示額 = 原価 + 運賃・梱包費 + 販管費 + 利益 の運賃です。→ 金属加工の見積もりの出し方
ここから先は、外注に出すための便の話です。 外注に出すと、品物が動きます。 行きと帰りで2回です。
送り 1,500円 + 返し 1,500円 = 3,000円/ロット
これは完全に定額です。100個送っても10個送っても、便は1回です。
| 納品数 | 送料の1個あたり |
|---|---|
| 100個 | 30円 |
| 10個 | 300円 |
⚠ 入れ忘れやすい項目です。 運送会社への支払いは月末にまとめて来るので、その部品の原価と結びつきません。
入れる場所は2つ考えられます。
| 入れ方 | 向いている場面 |
|---|---|
| 外注費に足す(熱処理の最低料金15,000円+送料3,000円=定額18,000円として扱う) | ⭕ その外注のために出した便がはっきりしている |
| 販管費として全体に乗せる | ⚠ 便を他の部品と相乗りさせている(どの部品のぶんか分けられない) |
どちらが正しいということはありません。 ⚠ ただし、両方に入れる/両方から落とすのだけは避けたいところです。見積もりから抜けやすい費用 に、落ちやすい項目をまとめてあります。
材料を支給されているとき
外注に出すときだけでなく、自社が外注先の立場になっているときにも同じ問題があります。お客さんから材料が支給される場合です。
支給には2つあり、材料費の扱いが変わります。
| 材料の代金 | 原価に材料費を | |
|---|---|---|
| 無償支給 | 払わない(預かる) | ⚠ 入れない |
| 有償支給 | いったん買う(買戻条件付きが多い) | ⭕ 入れる |
無償支給の材料費を原価に入れると、払っていないお金を計上することになります。 提示額がそのぶん高くなり、⚠ 相見積もりで理由なく負けます。
逆に、有償支給を「支給だから」と外してしまうと、材料代を自社で被ることになります。
⚠ 無償支給でも、材料費がゼロという意味ではありません。 保管の場所も、数え直す手間も、不良を出したときに材料を弁償するかどうかも残ります。材料費の欄には入れないが、条件は確認するという形になります。
外注先で落ちたぶんを、誰が持つか
103個送って、100個しか返ってこないことがあります。 熱処理で割れた、めっきではじかれた、といった場合です。
このとき、その3個の費用を誰が負担するのかは、加工の話ではなく取り決めの話です。
外注先が持つ 再処理・作り直しの費用を外注先が負担する
自社が持つ 自社の不良見込みの中に含めておく
材料代だけ自社 処理代は外注先、素材代は自社
⚠ どれが普通ということはありません。 会社どうしの取引条件によります。ここで断定すると、実際の取り決めと食い違います。
見積もりを作る側としてできるのは、「どうなっているか分からない」まま数字を置かないことです。
取り決めがある その条件どおりに不良の見込みを置く
取り決めが無い ⚠ 自社が持つ前提で見込む(後から請求するのは難しい)
なお、発注側が一方的に不良の費用を押し付けることは、下請法で制限されている場合があります。 → 手直しと返品の費用
まとめ
| 払う数 | 投入数(納品数 + 不良の見込み) |
| 割る数 | ⚠ 納品数(送った数ではない) |
| 1個単価の外注 | 投入数ぶん増える。材料費に近い |
| 定額の外注 | ⭕ 不良が増えても総額は変わらない。ロットが小さいほど重い |
| 送料 | 行き帰りで2回。完全に定額 |
| 支給材 | 無償なら材料費に入れない。⚠ 有償なら入れる |
| 外注先での不良 | 取り決め次第。⚠ 断定せず、条件を確認する |
⭕ 製造原価計算ツールの外注の欄は、この形で作ってあります。 「1個あたり」か「1ロット定額」かを選んで、外注先の見積もり額をそのまま入れれば、投入数と納品数の割り戻しは自動で行われます。
⚠ 送料と支給材の扱いだけは、判断が要ります。 送料は外注費の定額に足すか販管費に回すか、支給材は有償か無償かを確かめてから入れてください。
最終更新 2026/9/25