材料の重さの出し方|mm³のまま計算すると100万倍ずれる
材料費を出すには、まず重さが要ります。材料はキロいくらで買うものだからです。
重さを出す式は2行で終わります。それでも答えが合わないことがあるのは、式ではなく単位のほうです。
式は2行
重さ = 体積 × 比重
丸棒の体積 = π × (D ÷ 2)² × L
板の体積 = 幅 × 厚み × 長さ
丸棒は「断面積 × 長さ」です。 円の面積が πr² なので、直径から出すなら半分にしてから2乗します。
⚠ ここで直径のまま2乗すると、体積が4倍になります。 φ50 を 50 のまま入れると、φ100 の丸棒を計算したことになります。
★ つまずくのは、たいてい単位
図面の寸法は mm です。比重は「1cm³ が何グラムか」の数字です。 単位が揃っていません。
φ50 × 長さ100mm の丸棒(S45C、比重 7.85)でやってみます。
体積 = 3.14159 × 25² × 100 = 196,350 mm³
この 196,350 に、いきなり 7.85 を掛けてはいけません。
196,350 × 7.85 = 1,541,344
⚠ この数字は、グラムでもキログラムでもありません。 正しくは 1.54kg です。
正しい順番はこうです。
1 体積 196,350 mm³ ÷ 1,000 = 196.35 cm³
2 重さ 196.35 × 7.85 = 1,541 g
3 単位 1,541 ÷ 1,000 = 1.54 kg
まとめて1本の式にすると、こうなります。
重さ(kg) = 体積(mm³) × 比重 ÷ 1,000,000
⚠ 「1,000,000 で割る」を覚えておくと早いです。 図面の寸法をそのまま使えます。
板でも同じです。100 × 50 × 厚み10mm の S45C なら、
50,000 mm³ × 7.85 ÷ 1,000,000 = 0.39 kg
⚠ 「比重」と「密度」は、厳密には別のもの
表に載っている 7.85 という数字は、どちらの意味でも使われています。
比重 水を1としたときの比。⚠ 単位を持たない
密度 1cm³ あたりの質量。単位は g/cm³
水の密度が約 1 g/cm³ なので、数字としては同じになります。 そのため実務では区別せずに使われますが、厳密には比重に単位はありません。
⚠ g/cm³ で書かれた表と、単位なしで書かれた表は、同じ数字を指しています。 迷う必要はありません。
比重の一覧
この表の値は、材料重量計算に入っているものと同じです。
| 材質 | 比重 |
|---|---|
| SS400(一般構造用圧延鋼) | 7.85 |
| S45C(機械構造用炭素鋼) | 7.85 |
| SCM435 / SCM440(クロモリ鋼) | 7.85 |
| SUS303 | 7.93 |
| SUS304 | 7.93 |
| SUS316 | 7.98 |
| SUS430 | 7.70 |
| A1100 | 2.71 |
| A2017(ジュラルミン) | 2.79 |
| A5052 | 2.68 |
| A6061 | 2.70 |
| A7075(超々ジュラルミン) | 2.80 |
| C1100(タフピッチ銅) | 8.89 |
| C2600(黄銅1種) | 8.43 |
| C3604(快削黄銅) | 8.50 |
| 純チタン2種(TB340) | 4.51 |
| Ti-6Al-4V(64チタン) | 4.43 |
⚠ この表には、2つの公開資料で値が一致したものだけを載せています。 一致しなかった材質(鋳鉄・工具鋼など)は、ここには入れていません。
比重を1つ間違えると、材料費が丸ごとずれます。 ⚠ 確かめきれない数字を並べるくらいなら、載せないほうが安全だという判断です。 一覧に無い材質は、手元の材料屋の資料かミルシートで確かめてください。
⚠ 規格票からは取っていません。 JISの内容を転載するには著作権者の許諾が要ります(日本産業標準調査会)。規格番号と表題を書くのは許諾なしでできるので、材質の規格を知りたいときはそちらを辿ってください。
→ 材料記号の読み方
★ 同じ形でも、材質でこれだけ変わる
φ50 × 100mm の丸棒を、材質だけ変えて計算します。
| 材質 | 比重 | 重さ |
|---|---|---|
| A5052 | 2.68 | 0.53 kg |
| Ti-6Al-4V | 4.43 | 0.87 kg |
| S45C | 7.85 | 1.54 kg |
| SUS304 | 7.93 | 1.56 kg |
| C3604 | 8.50 | 1.67 kg |
一番軽い A5052 と、一番重い C3604 で 1.14kg 違います。3倍以上です。 同じ図面、同じ寸法で、材質欄が変わっただけです。
⚠ ただし「軽い=安い」ではありません。
材料費 = 重量 × キロ単価
アルミは比重が鋼の約3分の1ですが、キロ単価は鋼より高いのが普通です。 重さが3分の1でも、単価が3倍なら材料費は変わりません。⚠ どちらが安いかは、両方を掛けてみるまで分かりません。
⚠ 重さが出ても、まだ材料費ではありません
計算したのは「図面どおりの形」の重さです。 実際に買う材料は、それより大きいものです。
切代 削り落とすぶん
つかみ代 チャックでつかむぶん
定尺 買えるのは決まった長さ。⚠ 端材が出る
ここを足さずに見積もると、材料費が足りません。 詳しくは別の記事にまとめています。
まとめ
重さ(kg) = 体積(mm³) × 比重 ÷ 1,000,000
丸棒 π × (D ÷ 2)² × L ⚠ 直径のまま2乗すると4倍になる
板 幅 × 厚み × 長さ
⚠ 1,000,000 で割る。mm³→cm³ と g→kg で2回
⚠ 比重と密度は、数字としては同じ
⚠ 同じ形でも材質で3倍以上。ただし軽い=安い ではない
⚠ 重さが出ても材料費ではない。切代・つかみ代・定尺が乗る