機械チャージの計算方法|何を含めて、何を含めないか
機械チャージ(アワーレート)の計算式は、実のところ1つしかありません。
機械チャージ = 年間固定費 ÷ 年間実稼働時間
割り算です。迷うのは式ではなく、分子と分母に何を入れるかの方だと思います。
そして何を入れるかは、会社によって違います。 同じ「機械チャージ」という言葉で、桁が一つ違う数字を指していることもあります。この記事では、このサイトがどう決めているかを書きます。正解を示すものではありません。
他社がいくらでやっているかについては機械チャージの相場はいくら?に書いています。
分母が答えを大きく変える
先に分母から見ます。ここを間違えると、何を分子に入れても合いません。
分母は「機械が実際に削っている時間」です。会社が動いている時間でも、機械の前に人がいる時間でもありません。
年間実稼働時間 = 稼働日数 × 稼働時間 × 12ヶ月 × 稼働率
稼働率で外れるものが、段取り・メンテナンス・材料待ち・図面待ち・機械が空いている時間です。
同じ機械で、稼働率だけ変えて計算してみます。取得価格1,500万円・10年償却、家賃60万円/年、保険料と固定資産税で20万円/年。稼働20日/月・8時間/日とします。
| 稼働率 | 年間実稼働時間 | 機械チャージ |
|---|---|---|
| 100% | 1,920時間 | 1,198円/時 |
| 90% | 1,728時間 | 1,331円/時 |
| 80% | 1,536時間 | 1,497円/時 |
| 75% | 1,440時間 | 1,597円/時 |
| 70% | 1,344時間 | 1,711円/時 |
| 60% | 1,152時間 | 1,997円/時 |
| 50% | 960時間 | 2,396円/時 |
分子は一円も変えていません。 稼働率100%と50%で、倍違います。
稼働率を低く見るほどチャージは高く出ます。 分母が小さくなるからです。そして低く見る方が実態に近いことが多いと思います。1日8時間、機械が止まらずに削り続けている工場は、あまり多くないはずです。
ここを100%で計算していると、機械チャージが実態の半分になります。
何を含めるか
分子に入れるのは、機械を持っているだけでかかる費用です。動かしても動かさなくても出ていくもの、と考えると分かりやすいと思います。
| 含める | 中身 |
|---|---|
| 減価償却費 | 取得価格 ÷ 償却年数。会計上の数字をそのまま使ってもよい |
| 設置スペースの家賃 | 工場全体の家賃を、その機械の占有面積で按分する |
| 保険料・固定資産税 | その機械にかかる分 |
| 金利 | 借入やリースがある場合の、年間の利息 |
| その他の固定費 | 保守契約料など、動かさなくてもかかるもの |
何を含めないか
ここが分かれるところです。このサイトは3つを外しています。
工具費を外す理由
工具費を機械チャージに入れると、原価計算のときに二重計上になります。
製造コストを出すときは、工具費を「工具価格 ÷ 寿命個数」で別に持ちます。機械チャージにも工具費が入っていると、同じ費用を2回数えることになります。
そしてもう一つ、工具の比較ができなくなります。
| 工具費/個 | 加工時間 | 合計 | |
|---|---|---|---|
| 高い工具 | 高い | 短い(速度を上げられる) | ? |
| 安い工具 | 安い | 長い | ? |
どちらが得かは、機械チャージ次第で逆転します。 工具費が機械チャージに埋まっていると、この比較そのものが成立しません。分けておくと、2回計算して並べるだけで確かめられます。
電力・切削油を外す理由
これらは動かすとかかる費用です。機械が止まっていれば発生しません。
機械チャージは「機械を1時間確保するのにかかる固定費」なので、性質が違います。変動費として別に持ち、加工時間に掛ける方が実態に近くなります。
金額としては大きくないことが多いので、分からなければ0のままでも全体の傾向は見えます。
人件費を外す理由
人と設備は別々に数えます。
理由は2つあります。ひとつは、段取り中と加工中で人の関わり方が違うこと。もうひとつは、1人で複数台を見ている場合に按分が要ることです。合算してしまうと、どちらも表現できなくなります。
このサイトの機械チャージ 1,597円/時
+ 人件費 2,500円/時
= 4,097円/時 ← こちらが「加工チャージ」に近い
比べるときは、何を含めた数字なのかを先に確かめる必要があります。
工具を変えたら得か損か、2回計算すれば分かる
工具費を分けておくと、そのまま比較に使えます。
マシニングの工具を変えたと考えてみます。
| 安い工具 | 高い工具 | |
|---|---|---|
| 工具価格 | 12,000円 | 30,000円 |
| 寿命 | 400個 | 600個 |
| 加工時間 | 5分/個 | 4分/個(速度を上げられる) |
| 工具費 | 30円/個 | 50円/個 |
| 加工費 | 438円/個 | 350円/個 |
工具費は20円上がりますが、加工費が88円下がります。
| 納品1個あたり | ロット100個 | |
|---|---|---|
| 安い工具 | 2,236円 | 223,643円 |
| 高い工具 | 2,167円 | 216,691円 |
| 差 | 70円 | 6,952円 |
高い工具の方が安く仕上がりました。
もちろん、いつもこうなるとは限りません。機械チャージが低ければ、時間短縮の効果が小さくなって逆転します。 だから「高い工具は得か」という問いに一般的な答えはなく、自社の機械チャージで計算するしかありません。
そして工具費が機械チャージに埋まっていると、この比較そのものができません。 分けておく理由はここにあります。
→ 製造コスト計算ツールで条件を変えて2回計算すれば、そのまま並べられます。
償却が終わった機械をどう見るか
ここは分かれます。
会計上、償却が終わった機械の減価償却費はゼロです。そのまま入れると、先ほどの例では1,597円/時が556円/時になります。3分の1です。
| 機械チャージ | |
|---|---|
| 償却中 | 1,597円/時 |
| 償却済み(そのまま) | 556円/時 |
この数字で見積もりを出すと、たしかに安く出せます。 実際、償却の終わった機械を持っていることは競争力になります。
一方で、いずれ更新は必要です。更新のための積立分を乗せておくという考え方もあります。そうしないと、機械を買い替えた瞬間にチャージが3倍になって、値上げをお願いすることになります。
どちらが正しいという話ではありません。 会社の方針です。ただ、どちらで計算したかは自覚しておいた方がいいと思います。
→ このため、機械チャージ計算ツールには「償却費を直接入力する」モードを置いています。
機械が違えば、当然変わる
同じ計算で、取得価格だけ変えてみます(稼働率75%)。
| 取得価格 | 年間固定費 | 機械チャージ |
|---|---|---|
| 1,500万円 | 230万円 | 1,597円/時 |
| 3,000万円 | 380万円 | 2,639円/時 |
汎用旋盤とマシニングセンタで数字が違うのは、当たり前ということになります。
そして大型の機械で小型の部品を作れば割高になるのも、ここから説明がつきます。機械チャージが高いからではなく、その機械でやる仕事ではないからです。
出した数字は、単体では原価にならない
機械チャージは時間単価です。これだけでは何も出ません。
加工費 = (機械チャージ + 変動費) × 加工時間
加工時間を掛けて、初めて金額になります。 そこに材料費・人件費・工具費・段取り費・検査費が乗って、1個あたりの原価になります。
機械チャージを正確に出しても、加工時間が勘のままだと、精度は加工時間の側で決まります。 どちらか一方だけを詰めても、全体は良くなりません。
まとめ
- 式は
年間固定費 ÷ 年間実稼働時間の1つだけ - 分母が効く。 稼働率100%と50%で倍違う。低く見る方が実態に近いことが多い
- 含めるのは、動かさなくてもかかる費用(償却・家賃・保険料・金利)
- 工具費は外す。 二重計上になり、工具の比較ができなくなる
- 人件費も外す。 ただし世の中の「加工チャージ」は人件費込みのことが多い
- 償却済みの機械をどう見るかは会社の方針。自覚しておく
自社の数字を出すなら機械チャージ計算ツールに入れてみてください。結果はそのまま製造コスト計算に渡せます。
出した数字を使って1個あたりの原価まで出す手順は、加工の見積もりの出し方にまとめています。